『世界侵略:ロサンゼルス決戦』

・この映画ひどいぜ、と兄に押し付けられて観た割には存外楽しめた。実写映画をほとんど観ない勢なのでハードルがひたすら下がっていた/或いは比較対象が自分の内にストックされていなかった、というのはありそう。とりあえず全体としては楽しめたのでよかったと思います。
 
・ものすごく乱暴に要約すると「部下を死なせたことで疎んじられていた将校が宇宙人の襲来に際して動員され小隊を率いて空爆が行われる前に民間人を救出しようと奔走するが空爆は行われず帰還したところ米軍は壊滅していたので独断で宇宙人のマザーシップ(in地中)をブッ壊し凱旋したのでした」といった感じ。あんまり面白そうに見えないのは要約マジックの賜物なので懐疑してください。事実レベルに分解された物語に魅力が残っていない、なんてのは作品の瑕疵にはなりえないことなのです。解釈の介されない事象の連なりに面白みがない、なんてのは砂糖抜きのココアに甘くないと文句を付けるがごとき言い草です。話が逸れましたか。ゆんゆん。
 
・とはいえ、何だか随所に違和感を覚える作品体験ではありました。危機的状況で主人公と女性とのロマンスが示唆されるけれど成就することもどちらかの死によって悲劇の布石として機能することもなく終わったり。途中まで幾度となく的確な指示で味方を救ってきた主人公が味方将校の死(自らを犠牲として主人公含む全員を救った)を機に「味方を見捨てる人だからな」と蔑まれたり(そのシーンまでは主人公マジ頼りになるぜ的空気だったのに)。瀕死のエイリアンを解剖して急所を探るシーンがマジで本当に何の意味もなかったり(見つけた弱点狙ってねえ)。終盤の山場の一つであろう、父を失った少年に海兵隊の心得を復唱させるシーンの慰めになってなさが凄かったり。ラストで凱旋した部隊が用意された食事を固辞してまた戦闘に赴くシーンが割と意味不明だったり。
 一つ一つの描写だけ切り出して見るとそう不味くはない気がします。主人公が奮戦むなしく次々と仲間を見捨てることを強いられる撤退戦であれば蔑まれる空気も自然だったろうし、弱点を発見した時点で味方スナイパーが活躍していれば敵陣で時間を割いた甲斐があっただろうなあと思えただろうし、海兵隊としてのアイデンティティが繰り返し言及されていれば子供の励ましに海兵隊の言葉を使うことにも唐突さはなかっただろうし、戦闘に何がしかの意味づけがあればとんぼ返りするシーンもすんなり観られただろうと思いました。
 でも主人公は実際頑張ってたし(あれで文句つけられたら軍の将校とか誰にも勤まらん)、海兵隊らしさというものはあまり見えなかったし(お前が節穴なだけだ、という指摘にはぐうの音も出ない)、終始「生きて帰る」ことが目標とされていた戦場なので戦闘がポジティブに描かれることはなかったし(ついでに言えば、ラストシーンで敵の大半が無力化されているので「俺達が戻ってやらなければ」という話も成立しない)。エイリアンの急所については本当に意味不明。もしかして狙っても外殻に阻まれて無意味って話? だとしたら外殻剥いだ時点で無理だ諦めようとなるはずなんだけど……うーん?
 
・というわけで、たぶん構成とかあんまり考えずに作った作品なんだろうなーとは思いました。整合性といってもよい。個々のエピソードがそれだけ見るとなんか格好いいけど時系列にハメて見ると何の意味もない、とゆう。もしかしたら借り物の「それっぽい」モチーフの集積なのかなあと観ながら思ったりもしましたが、あんまり異種戦争もの映画とか観たことがないので何とも。
 
・最後にひとつ褒めるところ。売りの一つと謳っているだけあって、銃撃戦の比率の高さにはすごいものがあります。ずっと戦ってた。「こいつは生きるだろうなー」と思ってたキャラも割と普通に死ぬので緊張感が持続することこの上なし。
 
・もうひとつ褒める。エリート組の、主人公にコンプレックスを抱いてた頭でっかち系のいくじなし将校が部隊を主人公に託してスーサイドボムするシーンは完璧だったと思います。彼の描写が登場以降このシーンのために奉仕していたかのごとく一貫していたこともあり。