『ビアンカ・オーバースタディ』/筒井康隆

ブレインストーミングめいた散漫な雑感。
・メタラノベってそういうことなん? という困惑。
・意識的に行われたであろう、序盤の定型文の反復。代わり映えのしない現実を象徴する仕掛けだったのか、「ラノベって繰り返しが多いものでしょう」という作者の視線によるものなのか判断がつかない(別に排他ではないので両立していても構わないんだが)。
・「やめれーっ」に代表される何か変な言葉遣い。筒井康隆を短篇集くらいでしか読んだことがないので確証がないんだけど、もしかして作者の持ち味なのか。或いはこうやって未読に近い読者に「筒井ってこういう文章を書くんだ」と感じさせるための仕込みとか? 後者だとすれば何のために? ともかく違和を感じさせる発話が多かった(設定との齟齬を感じるのが一因か)。
ビアンカのキャラクタ付けと振る舞いの齟齬、そしてその種明かし。誰もが遠巻きに見守るって程には聖性が感じられないなこの娘、と思って読んでいくと最後に草食系男子の話が出てきて、そういう意味ではある種の納得を齎される構造にはなっていると思うんだが、別にそれ要らないのでは、との印象強し。
・唐突なヤクザ睾丸カット。屈託なさすぎて普通に怖い。ラノベ批判の文脈以外で読み込めるのか自信がない。
・取って付けたような草食男子や環境問題、政治の話。筒井の皮肉にしては出力低くないか、というか全体的に精度が低すぎて話にならない(煽りにもならない、と書いた方が精確かな)。話にならないのは判りきってるはずなので、ではなぜこのような、と問うていきたいんだけど、正直よくわからん……。ラノベって形式への皮肉、というのはあまりにも貧しい発想なのであまり採用したくないし。……編集部への意趣返し? それもまた貧しかろうなあ。
・煩悩まみれの男性と頭のネジが外れた女性の対比。こういう男子像って中学生のそれとして(オタ界隈では)描かれがちで、高校生はもう一回捻った性欲の持ち主として描写されるものでは、とまず感じたけど単に好みと偏りの問題かな。うーん。
・総じて「ステロタイプラノベを皮肉ってみましたよ」という印象ではあるんだけど、その皮肉の行い方がどうにも雑で、これ作者も適当に書いてるんじゃないの、といった感触がどうにも拭えない。特に後半。
・太田が悪いんだな。たぶん。