『も女会の不適切な日常』/海冬レイジ

1巻。
・居心地のいい空間の実装。恋愛要素の導入と過酷な葛藤の回避或いは先延ばし。といった発想が再序盤では割と浮かぶ。
・告白の先延ばし/不成立の徹底。あらゆる働きかけが(お決まりの)ギャグ/持ちネタとして処理される空間。切迫した想いは常にギャグとして処理され、アプローチとして表向きに成立することはないものの、その裏に隠れた―――或いは「隠せていない」―――想いは無事に伝達される。秘め事めいたエモさの現出。
・登場人物全員の努力で成り立つ関係性、ではある。
・書けば書くほど生徒会の一存の問題意識と被る。
・と思ったら急展開。4次元人という単語はそう特殊なものではないにせよ、文脈と付随する説明の手順を鑑みるに、Ever17のパロディっぽい雰囲気を感じなくもない、かな。
・主人公オリエンテッドな物語(また胡乱な語を遣う……)。或いは「アイだけがヒロインたりうる」などとぱなしてもよい、のか。たとえばスマガの日下部ルート終盤のアレとか引き合いに出しつつ。存在のレイヤーがずれてしまっている。
・前編終了、という感覚がすげー強い……。物語はまだ導入部でしょう!?(半ギレ)
・全編に通底する「語られ直すこと」への意識。何気ないシーンが別の意味を持っていたということ。その過去も変動しうるがゆえの危うさ、面白さ。

2巻。
・ありえねーだろ、という状況を作中ギミックに回収してしまえるのは強い。↑でも書いたけど、実はこうだった、と再解釈されることを前提とした伏線の撒き方。
・「押す」側として遡行と試行を繰り返すのではなく、敵が「押した」状況を打破するための戦い。3巻では敵味方が複雑に押したり戻ったりの大乱戦ですね! きっと!(たぶん把握できない)
・っつうか実は一読だけではあんまり話が理解できていない。1巻もだけど。悲しいほどにあたまがわるい
・ちだね先輩と雛子と繭の動いてない感。ちだね先輩はザジよろしく「動いたらシリーズの終わり」ってキャラなのかな。もしかすると。
・重層的にキャラクタの認識/記憶が蓄積されていく作品なので、このまま続くとどんどん執筆難易度上がりそう。
・主人公の覚醒―――というよりは、擬態の解除といった方が感覚には沿う。
・完結しないことには、という気はする。ばらばらに読んでも充分に楽しいんだけど、どんな結末を用意するのか。そこが見たい。

 強力な認識が現実を変容させる、という設定のエモさ、強さ、正しさ。
 ちだね先輩をどう扱うかで今後が大きく変わってくると思う(個人的には既にもったいない処理に見える―――早漏?)ので、注視していきたい。新刊買いしてもいいなーと思いました。