『紅』/片山憲太郎

・紫さん7歳がどこまでもかわいい。
・そのかわいさが通常の7歳女児を思い浮かべて連想できるそれとは少し違う印象で、どういうことかっつーと、紫さんは我儘とか言わないんですね。そして精神的にありえないレベルで成熟してる。なのに、自分が(身体的にも、経験的にも)子供(≒未熟)であることを強く自覚している。このくらい頭がよかったら未成熟であることを強い武器として運用するプロ幼女の道も開けていると思うんだけど、そうはしない。謙虚でひたむきながんばりやさん。萌えない訳がないでしょうが。殺す気か。
 
・主人公に安心感がありますね。すごく身も蓋もない言い方をすると、ADVで選択肢を絶対に間違えない感じ。戦闘力的な意味でも対話の際の物腰的な意味でも、重要な場面ではしっかりキメてくれるはず、と確信させてくれます。
 
・お姉ちゃんとの不倫ルートとかいいと思います。幼なじみとは爛れた感じでしっぽりと。
 
・続編作りにくそうな設定なので、続刊については「どう繋げるのか?」という技術的な興味が非常に強いですね。舵取りの方向性、というか。

『狂乱家族日記 弐さつめ』/日日日

・安心して読めますね。というのはまあ、たぶん誰かが発狂して家庭崩壊とかそういう展開はないので、不安感を煽られる箇所が存在しませんよね、という話なんですが。だから物語を動かすのが外部の悪意になるのは自然な流れに思えます。コメディ主体ながら、少しの毒を混ぜたお話。ちょっとだけ覗く鋭利さ、というのでしょうか。たまーに見える冷徹な視線が逆にこの作品の暖かさを生み出す源なのではないか、などと思いました。日日日の作品二冊しか読んでない人間が何言ってるの感すごいですね。

『学校を出よう!』/谷川流

・1巻。ひたすら冗長な文章で記述される物語が、終劇に近づくにつれ、その文章の無駄さを一気に捨てて加速していく感覚の気持ちよさ。ドライブ感、という言葉を用いて形容してもいいのかな。瞬間最大エモさには凄まじいものがあると思います。
・2巻。SFコメディ。つまらない/無駄な部分が主観的に存在しませんでした。どの箇所もそれ自体が面白く、かつ大きな流れの中で有意である、という。僕は非常に頭が弱い(記憶力・分析力の双方が欠落している)割に説明描写を好まない人間なので、「楽しいし訳がわかる」という構成にはかなりときめくものがありました。
・3巻。あんまり光明寺好きじゃないっぽいんだよなー、というのがあって、でもまあ続刊を読んでから改めて考えたいところではあるので今は備忘録的にそう記述しておくに留めます。ラストシーンのエモさは1と張るんじゃないかしら。副題の意味深さ、被造物たちの朗らかな諦念、あっけらかんとした希薄さが美しすぎて、夢のよう。

『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」』/上遠野浩平

・超好き。たぶんこの寂しさや刹那さ(誤字にあらず)の表現ってのは時代に大きく寄りかかったソレなのでしょうが、しかし古臭さもうそ臭さも感じられませんでした。輪の描き方、というのかなあ。うーん、考えがまとまらない。

 VSイマジネーターの感想を書きあぐねているうちに色々と億劫になって放置していた、というのがこの長期停止の顛末。下手の考え、の諺を持ちだすのは誠実さを欠いた過当な卑下(それでいてナルシシズムに塗れている!)に思えるので避けたいのだけど、停滞しつつ考え込むよりは曖昧な感慨を無理にでも記述してとりあえず先に進んだ方がきっと有意義だと思うので、そのような方針で行こうと思います。
 
そんな訳で、とりあえず短評。未来の自分に届けこの惨状!